何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

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043| TRPGは人間同士でおこなうゲームです
 厳密な話をすると、アウレーリアが件のNPCに好意を抱いている、と小説内で明記したのは星野さんではなかった。その回は星野さんが急病で倒れ、急遽代打で別のGMが執筆を担当したのだった。執筆はセッションのログをもとに行われたから、その場のノリでぽろりと漏らしたプレイヤー自身の発言がキャラクターのものとして混同されてしまったのだろう。
 私はとてもショックを受けた。私自身の血肉から生まれ、自身の手で魂を吹き込んだキャラクターがねじ曲げられた。それは私自身の感性、私自身の価値観を否定されたも同然だった。おまえの創ったキャラクターなんていらない、おまえの感性おまえの価値観おまえの人格はいらない、そう言われたも同然だった。
 それだけではなかった。私の参加シナリオは別人が執筆しているのに、シェラフィータのシナリオは星野さんが執筆している。その事実がなお一層、被害妄想をかきたてた。星野さんはアウレーリアに飽きたんだ、だから他の人に任せた、星野さんはシェラフィータさえいればいいんだ、アウレーリアはもういらないんだ。いくら冷静になろうとしてもそんな疑念が抜けなかった。
 私は今、キャラクターの発言とプレイヤーの発言を厳密に区別しておこなっている。誤解されるのが怖いから、自分の創ったキャラクターについてくどいほど説明するようになった。ブログには詳細なキャラ設定をアップ。自分でもどうかと思うけど、誤解されて泣くのは自分だ、いつ何時、執筆担当者が別の人に変わってしまうかわからない。
 TRPGは、人間同士でおこなうゲームだ。人間には感情がある。好き嫌いや価値観がある。GMも人間だ、書きたいと思えないものは執筆を後回しにするだろうし、他人任せにもなるだろう。TRPGは、人間同士でおこなうゲームだ。人間は病気になる。心身が不調のときはセッションもおこなえないし、リプレイ小説も執筆出来ない。ブランジァンのセッションはスケジュールを重視しており、それを乱すことになれば執筆担当者は変更になる。全セッションを同一GMの担当でおこなえることのほうが、奇跡と呼ぶべきことなのだ。TRPGは、人間同士でおこなうゲームだ。人間はいつか死ぬ。それがいつ訪れるのかは誰にもわからないことで、キャンペーンシナリオの終了前に誰かが欠けるかも知れない。TRPGは、人間同士でおこなうゲームだ。参加者全員の人生が、その内容に影響を及ぼす。森山が敵視したオナニー補正とか理想化とか、そんなものは些細なことで、参加者の生死すらもゲームの結果の一部となる。TRPGは、現実だ。人間同士でおこなうゲームは、ゲームを越えた現実だ。
 私のキャラクター設定を見た人が「そこまで細かく書かなきゃあなたのキャラクターの魅力は伝わらないのか」とせせら笑った。馬鹿な人だな、と思った。私が自分の創ったキャラの魅力を伝えようとしていると勘違いするなんて。私の内心を捏造するな。自分の創るキャラクターには魅力がないと思っているから、いともたやすくねじ曲げられてしまうと知っているからこそ、私は喪失に備えるのだ。
 いつ何時、リプレイ小説の執筆者が変更になってもいいように。
 誰が書いても私の創ったキャラクターらしくなるように。
 滑稽なのは自覚している。痛い奴だと自分でも思う。だけど自分の言動が他人にそう思われることより、自分の創ったキャラクターが歪められることのほうが、私には耐えがたかったのだ。
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Copyright © 『アンチ・シンデレラ』 白木紅愛・作. all rights reserved.
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