何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

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040| マインドレイプ
 何かが違う。求めているのはこれじゃない。
 リアーヌのリプレイ小説を読むたびに感じた違和感が、第八回の結果を受けて決定的なものになった。胸に開いた空洞が冷える。ついていけない、と私は思った。こういうノリは苦手だ、と思った。自分の中で渦巻いている自分でも処理しきれないものが、他人の物差しで単純化され、ウケのいい枠の中に押し込められたような気がした。それは敗北感でもあった。周囲が求めているものは私の創ったキャラでもなければ私の演じるキャラでもなく、わかりやすい王道展開なのだ、それがわかっているだけになおいっそう嫌悪が募った。
 だけど私は涙を流した。自分の書いたものではない、セッション中の台詞でもない、志水GMが独自に書いたリアーヌの台詞を読んで、私は涙を流していた。それは私のイメージするリアーヌの言葉ではなく、私自身の本心だった。
「あなたを損ねた者を見逃すことなんて出来ないわ」──そうだ、だから私は森山を罵らずにはいられなかった。半分くらいは私のせい、私が言わせたこととはいえ、星野さんに対する彼の発言を私は不快に思っていた。星野さんに関する下品な冗談を言うたびに、私は怒りを感じていた。「私は駄目ね。あなたにとって私はただの便利な道具に過ぎないのに……、そんなことは最初からわかっていたはずなのに、私はあなたに惹かれてしまった」「私には利用価値があると、あなたはそう思ったのでしょう? 世界の外側に行くために利用出来そうだ、と……。だったら最後まで私を利用してほしい。世界の外側に行くために、私という器を使ってほしい」──それは私が星野さんに対して言わなければならないことだった。多少の違いがあるとはいえ、だいたいこれで合っている。シェラフィータのNPC化に対する怒りも、突き詰めればこういうことだ。
 だからこそ、嫌悪が募った。だからこそ、私は怒った。
 なんでおまえがこれを書くんだ。星野さんには理解出来ない、伝えられない本心を、なんでおまえが勝手に書くんだ。私の創ったキャラクターをうまく描けないおまえなんかが、なんで私の言いたいことを勝手に小説にしてるんだ。ふざけるな。なんだこれは。私の本心を公開していいと許可した覚えなんかない。それとも何か、これはおまえ自身の本音か。リアーヌにハマってGMとしての公正さを失ったことに対する自責の念から生まれた台詞か。そうなのか。だったら笑ってやる。通じるはずのない相手にこんな想いを抱くなんて、おまえはなんて愚かなんだ。
 そう思うとまた、涙が溢れた。救いようのない愚か者を馬鹿にしているだけなのに、胸が痛くて仕方がない。
 リアーヌらしいと思えない、嫌悪を覚えるこの展開を、私は何度も読み返した。読みながら、星野さんもこの小説を読んでいるだろうか、と思った。これが私の本心なのだと気づいてくれるだろうか、と思い、多分無理だろうな、と思った。
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Copyright © 『アンチ・シンデレラ』 白木紅愛・作. all rights reserved.
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