何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

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034| 殺意
 第七回リプレイ小説でも、私のキャラは活躍していた。リアーヌは終末の世において新興宗教の教祖となり、世界にさらなる混乱と絶望をもたらした。アリスはメインシナリオのセッションに採用され、NPCのリリアンとともに例の電波をまき散らした。踊り子のアヌーシュカは闇の王の寵姫となり、女貴族ユーリアは外なる神のしもべとして闇の秩序で人々を統べた。
 しかし自分のキャラクターの活躍などどうでもよかった。
 これまで抑えていたものが殺意となって噴出した。
 そのきっかけとなったものは、リプレイ小説の公開の翌日にアップされた。公式サイトのコンテンツ、全シナリオのダイジェストで、執筆するのは各シナリオの原案・監修担当者。つまりブランジァンのメンバーで、星野さんもそのひとりだった。
 星野さんの担当は、CシナリオとDシナリオだった。
 星野さんの執筆したCシナリオのダイジェストに、聖霊となったシェラフィータがNPCとして登場していた。
 今作の舞台は前作の百年後の世界なのに、シェラフィータは永遠の存在となって物語に登場している。悔しくて仕方がなかった。シェラフィータは生きている。星野さんの中で生きている。前作の物語が終わったあともシェラフィータの人生は続いていて、彼女は星野さんの中で永遠の存在になったのだ。それを見せつけるように、いまいましいエセ聖女が再び表舞台に現れた。アウレーリアはどこにもいないのに。私の中にすらいないのに。この期に及んでまたシェラフィータが私の行きたい場所にいる。
 許せない。殺してやる。
 殺意はシェラフィータに対してではなく、星野さんに対して抱いた。
 それは自分に対する怒りでもあった。星野さんにとっての私がただのお客様でなくなれば私は望みのものを得られる、そんなことを考えていた自分に対する怒りだった。たとえ彼にとっての私が特別なものであったとしても、彼が私の創ったキャラを愛するとは限らない。むしろ特別であるからこそ、表だった場所においてはその事実を隠そうとする。また、私の好意を得ることによってアウレーリアに対する所有欲まで満たされてしまい、結果、表に出てくるのは手の届かない場所にいる女の創ったシェラフィータだけ。釣った魚に餌をやらない、余所の女に興味を抱く、それは男の習性だ。奴らはそういう生き物であり、痛い目に遭わせなければ延々と調子に乗り続けるのだ。
 私には失うものなど何ひとつとしてないのだと知った。
 失うものなどないのだから、手段を選ぶ必要などなかった。
 私は星野さんを脅迫した。本名を知っていることをネタに、しかしどこで知ったのかは告げず、私の発言によってはあなたはプレイヤーとの親交を禁じるサークルの規約に反したと見なされますよ、と脅迫した。メールはサークル経由ではなく、SNSのメッセージで送った。メールアドレスを知らなくてもSNSのアカウントがあれば簡易メールを送信出来る。私はそれを利用した。自力で星野さんのアカウントを探して。打ち上げオフでの発言をヒントに星野さんのプレイヤー時代の掲示板のログを探し、その発言内容からハンドルネームを特定し、そうして集めた情報をもとに彼のSNSのアカウントを見つけ出したのだった。
 だけど脅迫メールの中でさえ、私は望みを言えなかった。
 私が要求したことは、私的な連絡、それだけだった。
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