何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

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033| 楽しさの格差
 森山の息が震えるのがわかった。「こういう話をしてるときって、女性のその、性器はどうなってるんですか」。何度も生唾を飲み込みながら、森山は私にそう尋ねた。
 それはスカイプでの通話中、アウレーリアの従者のラヴィンがどんな風にセックスするのか、聞かれてもいないのに延々と喋り続けた森山が不意に口にしたことだった。
 うわ、面倒だな。森山のエロトークなんて聞かされても濡れることはおろか萌えたりときめいたりすることすらないのになんか、あちらさんは息が荒いし、そもそも私は相手の話をまともに聞いていなかったし、というか最近の森山はやけにエロトークがきついし、かといって馬鹿正直に「あなたのエロネタはつまらないし、興味ないです。星野さんの話だけしてくれればそれでいいです」なんて言ったらまたムキになりそうだし、返事をするのもスルーするのも何もかもすべてが面倒だ。げんなりした気分のまま、私は己の手の中にあるPHSの画面を眺めた。
 森山と話しながら、私は着信履歴をチェックしていた。「ああ」とか「ええ」とか「はぁ」などと適当な相槌を打ちながら森山の話を聞き流し、一件もないとわかっているはずの着信履歴を眺めていた。
「ああ、アネモネさんはこういう話は無理かなー」
 どこか小馬鹿にしたように、森山が呟いた。
 無理じゃないです、あなたとはしたくないだけです。
 そんなことを思いながら「そういう話はちょっとね」と呟き、私はまた、着信履歴を眺めていた。

 冷静に考えると、森山の口にする星野さんの話題は論外だ。
 高梨クンは絶対アウレーリアでオナニーしてますよ、しゅぽしゅぽしゅぽしゅぽしゅぽしゅぽしゅぽしゅぽ、そんな発言は可愛い方で、まあ彼はシェラフィータでもオナニーしてるでしょうけどね、アウレーリアとシェラフィータは鉄板だろうなぁ、シェラフィータのような無垢な聖女を穢すのはたまらないだろうなぁ、そういうのはアウレーリアでは無理ですからね、まあプレイヤーのルックスはアネモネさんが勝ってますけどやっぱ理想化された二次元美少女に三次元は勝てないからなぁ、でもまあ如月凛さんもストレス溜めてましたけどね、公式掲示板のキャラクターメッセージには如月さん悪役キャラばかり投稿していたし、といった感じで、如月凛やシェラフィータの話題で私を苛立たせることもしばしばだった。
 それでもひとりでいるよりは、彼と話すほうがマシだった。
 崩壊した家庭の中、誰もいない部屋でひとり喪失感に苛まれるより、無神経な発言に曝されるほうがまだマシだ。どれほど無神経な発言でも、どれほど下品な発言でも、そこには私のアウレーリアや星野さんが存在する。喪失感と孤独の中では決して想像出来ないことが、私の脳裏に現れるのだ。たとえそれが偽りでも、すぐに消えるものであっても、私にとってはひとりでいるよりずっとマシなことだった。
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Copyright © 『アンチ・シンデレラ』 白木紅愛・作. all rights reserved.
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