何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

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032| 鳴らない電話
 私は携帯電話を三台、三回線分契約していた。
 一台目は高校生の頃から使っている、いわば普通の回線で、友人知人や親兄弟のケータイ番号を登録している。二台目は風俗店で契約させられた、いわば仕事用の回線で、客との通話やメール専用の電話機になっている。三台目はPHS。端末の色使いがアウレーリアっぽいという理由だけで契約した回線で、電話番号を知っているのは一人だけ。星野さんに宛てたメールの末尾に記した署名の中に、PHSの番号とメールアドレスを書いたのだった。
 一台目のケータイは、基本的に放置状態。二台目のケータイは、電源を切っていることの方が多い。いつでも繋がる関係というものを私は嫌悪している。息苦しい。面倒だ。私を理解出来る人はいない。私がどんな人間で、どんな価値観の持ち主で、どんなことを思っているのか、どんなことを望んでいるのか、誰ひとりとして知らないのにどうして私は彼らといつでも繋がらなければならないのか。納得出来ない。だから私は携帯電話を放置する。
 だけどPHSだけは、いつも手元に置いていた。
 就寝時にも電源を入れて、いつ電話がかかってきても通話出来るようにしていた。
 しかし星野さんからは、電話はかかってこなかった。
 ただブランジァン公式サイトのスタッフ日誌に記された星野さんのコメントが、オフ会以降、やけに明るく楽しげなものに変化した。それを見た森山は、いつものように下品で下世話な発言をスカイプ通話で私に聞かせた。そんなとき、私はPHSを握りしめた。次の瞬間には星野さんが電話をかけてくるかも知れない、星野さんから電話があれば森山の相手をせずに済む、そう思うたびに私の胸は悲鳴を上げるように軋んだ。
 星野さんに対するこの感情が愛ではないと知っていたからだ。
 幼稚な未練に過ぎないと自分でも気づいていたからだ。
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