何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

031| それはすでに潰えた夢
 自分の創ったキャラクターが、多人数の共有する架空世界の神になる。私は激しい苦痛を覚えた。リアーヌには神への道が用意されているのだと、志水GMはセッション時に語った。今更になってそんなこと。それが正直な気持ちだった。違うキャラで、違う動機で、一年前に辿った道をもう一度なぞれと言うの。リアーヌの活躍と成功が用意されているというのに、私のテンションはどこまでも落ちる。
 神になる。それはアウレーリアの野望だった。
 今作の舞台は、前作の百年後の世界。リアーヌと魔剣の男のやりとりを思い出すたび、百年前にこの世界で同じことをしようとして誰にも顧みられることなく消えていった少女がいる、私はそれを知っているのに何も知らないフリをして同じ道をなぞらなければならない、そんなことを思いながら喪失感に圧倒される。

 森山の発言は、下品になっていく一方だった。
「志水GM、リアーヌを女神扱いか。アネモネさんの術中に完全にハマってるな。リアーヌでオナニーしまくってるんだろうなぁ、しゅぽしゅぽしゅぽしゅぽ……」
「はぁ……」
「高梨クンもオナニーしてますよ」
 高梨、というのは星野さんの本名だった。
 前作の打ち上げイベントのときに星野さんの着ていた背広の内側に刺繍されていたと、たまたま目にした森山が私にそう教えてくれた。
 森山は星野さんのことを高梨クン、と呼ぶようになった。
 それが決して親しみゆえの呼び方でないことは、彼の口調と声色から容易に察することが出来た。
「高梨クン、オナニーやめられないんじゃないですかね。アネモネさんのブログを見ながらアウレーリアでしゅぽしゅぽしゅぽしゅぽ……」
 森山は楽しげだった。というか何なんだその独自性溢れる間抜けな擬音は。おまえはオナニーするときにそういう音を出してるのか。私は声に出さずに突っ込む。しかしツッコミを入れた途端、森山の発言に妙な生々しさを感じてしまい、私は思わずドン引きした。風俗店に勤務しているからといって、客でもない男性の性欲処理はしたくない。むしろ風俗店勤務だからこそ、性欲処理には対価を貰う、そんなプライドが根付いていた。
 それでも森山と話すのは、星野さんの話題が出てくるからだ。
 私は比佐田キリアのチャットに顔を出さなくなっていた。共有出来るものはなく、彼の発言ひとつひとつに釈然としないものを感じる。他の参加者も今のゲームを純粋に楽しんでいる人ばかりで、彼らの前向きな発言に私は疎外感を覚える。まるで異星人の巣窟だ。顔を出すのも億劫だった。
 しかし少なくとも森山とは、星野さんの話が出来る。
 それがいかに下品なものでも、それがいかに不快なものでも、星野さんの話をしている間はその存在をすぐ近くに感じることが出来るのだ。
スポンサーサイト
Copyright © 『アンチ・シンデレラ』 白木紅愛・作. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。