何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

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027| TRPGはコンピューターゲームではありません
 リアーヌの扱いが目に見えて変わった。
 F-1シナリオの参加者に抜擢されただけでなく、そのセッションはマンツーマンで、F-1シナリオbルートと称するリアーヌ専用シナリオが新たに立ち上げられたのだった。
 森山の僻み発言は、悪化する一方だった。
 私に対する悪意すらも、隠そうとはしなくなった。
「リアーヌは志水GMのシンデレラだな」
 スカイプの音声通話で森山はそう、吐き捨てた。
 私は笑った。おまえがリアーヌでオナニー出来なくて不機嫌になってるのはわかったから。いい加減、消えてくれないかな。GMが私のキャラでオナニーしようが何しようが、私にはどうでもいいわけ。それで活躍出来るなら、プレイヤーとしての箔がつくなら、如月凛になり代われるなら、裏事情なんて気にならない。むしろどんどんオナニーして贔屓してくださいと思ってるから。おまえの僻みは滑稽だから。そろそろ消えてくれませんか。そう思いながら私は笑った。
 私の笑い声の意味を森山はどう受け取ったのか。
「あー。意味わかってないかー。アネモネさんは純粋だからなー。シンデレラっていうのはTRPG関係のスラングでGMの作ったヒロインっていう意味っすね。女性プレイヤーの演じる女性キャラクターに過剰に入れ込んだ男性GMが貴重なアイテムやNPCをそのキャラに与えまくることがあってねー、それを皮肉ってシンデレラって言うんですけど。GMのオナニーによる都合のいいヒロインって意味ですけど。あー、でもそんなこと言ったらアネモネさんを馬鹿にしてるみたいですねー。アネモネさんの活躍は実力じゃない、依怙贔屓だって馬鹿にしてるみたいですねー。申し訳ないですー。ははははは」
「馬鹿じゃねえの、おまえ」
 思わず素で吐き捨てていた。森山が息を呑むのが聞こえた。
「依怙贔屓が嫌ならコンピューターゲームだけやってろよ。TRPGって人間同士のゲームだろ。人間同士のゲームっていうのは、オナニー補正やエロ妄想による都合のいいヒロイン化とか、そういう汚いものを全部ひっくるめて成り立ってんだよ。そういうのをいっさい許容出来ないくせにTRPGに参加して女性プレイヤーに粘着して相手を白痴扱いして、どんだけ純真なんだよおまえ。どんだけ夢見てんだよおまえ。マジきもすぎ。大体さぁ、何のためにこの私が白レースミニスカなんていう痛々しい格好でオフに行ったと思ってるわけ? GMに夢見させて贔屓を勝ち取るために決まってるだろ。贔屓されるもの実力のうちなんだよ。そんなことも理解出来ずに文句言ってるクソ男なんてお呼びじゃねえから」
 森山はまるで呻くように、時折「あぁ」「うぅ」と呟く。
 もはや先ほどまでのような言葉を発することはない。
 私はせせら笑いながら、森山に手の内を明かした。
「リアーヌはね。魔剣に恋をする、ってロールプレイで行くので」
「ああ……、それは完璧だな……」
「だろ?」
「志水GM、リアーヌにハマりますよ……」
「だろ?」
「僕の負けです……」
 負けって何だ。私は森山と戦っていたのか。というか森山は私のいったい何と戦っていたんだ。勝手にバトルの相手にされて、私はいい迷惑だ。それともこれも〝人間同士のゲーム、TRPGの暗黒面〟というヤツなのだろうか。
「すべてをゲームだと割り切ってる人にはかなわないな……」
 森山はしみじみと呟いた。私は何も言わなかった。森山に手の内を語ったのは、目障りな害虫のプライドを叩き潰したかったからであって、理解を求めたわけではない。だから彼の呟きが事実に反していたとしても、私はそれを正さなかった。
 すべてをゲームだと割り切っているなら、アウレーリアの一件で涙なんて出なかった。すべてをゲームだと割り切っているなら、オフィシャルのルールを覆してまで何かを手に入れようとはしない。つまり、もしも私が本当にすべてをゲームだと割り切っているなら、ゲームだと割り切っているかのような言動なんて取らないのだ。
 私はブランジァンのセッションをゲームだと割り切れない。
 だから自分自身すらもゲームの駒として使うのだ。
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Copyright © 『アンチ・シンデレラ』 白木紅愛・作. all rights reserved.
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