何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

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023| 置き去りにされたままの
 ゲーム開始から三ヶ月が過ぎ、四度目のセッションを迎えた。
 空洞は埋まらない。何をしても楽しいと思えない、それどころか、私はリプレイ小説すらもまともに読まなくなっていた。以前はすべてのシナリオのリプレイに目を通していたのに、今は自分のキャラクターの登場シーンだけ見て終わり。しかも読むのは一度だけ。星野さんのシナリオに参加していた頃は、自分のキャラの登場シーンを何度も読み返していたはずなのに、今では自分のキャラすらも他人事にしか思えない。
 今回のセッションの結果、リアーヌは魔剣を手に入れた。
 上の空で演じていたのに、それでも魔剣に選ばれた。
 小説内での描写から「男の尻を狙う女」「アッー!」などとネタにされ、ただ活躍するだけでなくネタキャラとしての地位も得た。
 アリスの参加シナリオのGMは降板し、代打で入った女性GMはアリスをいたく気に入って、リプレイ小説内ではまるで主役のように扱った。踊り子アヌーシュカの担当も同じ人に変更になり、アヌーシュカには下僕男と豪華なドレスが与えられた。下僕男はアヌーシュカのために創られたNPC。女貴族ユーリアはメインセッション参加者に選ばれ、それなりに活躍するようになった。
 それでも私は楽しめない。楽しいと思えない。

 森山とはスカイプの音声チャットで話すようになった。
 彼に対する不信感や嫌悪は募る一方だった。それでも手を切らないのは、ゲームの性質上むやみに敵を作りたくないというのもあったし、共通の知り合いと気まずくなるのは面倒だし、まあ色々あったけど、何より大きかったのは、星野さんの話をしてくれる唯一の相手であるという点。森山の言葉がいくら悪意に満ちていたとしても、本当なのかどうかすら怪しいものであったとしても、星野さんとの繋がりを実感していられるのは森山と話しているときだけ。だから私は森山と手を切ることが出来なかった。
 リアーヌの活躍に森山は苦々しげに吐き捨てた。
「またシンデレラか。あのGMもリアーヌで抜いたんだろうなぁ」
 シンデレラ。私の大嫌いな童話だった。己の不幸を嘆くしか脳のない馬鹿な女が、悪意を持たず爪を研がず、見ず知らずの他人から与えられた万能の魔法で幸せを掴む。くだらない。実にくだらない。そんな童話のヒロインが女の憧れる幸せの代名詞のように扱われるなんて、侮辱だとしか思えない。その件を抜きにしても、森山の今の発言からは、侮蔑的なニュアンスを感じた。リアーヌの活躍はGMのオナニーのたまものであってプレイヤーの実力じゃない、そう言われたも同然だった。
 私は笑った。明るく無邪気に嘲笑した。
 僻むなよ。リアーヌが手に入らないからって。自分のキャラとリアーヌの絡みでオナニー出来ないからって。おまえなんて最初から私は相手にしていない。私の味方を装いながら私のキャラの活躍に理由をつけて見下すような、そんな奴に私は自分の創ったキャラを与えない。
「アヌーシュカも活躍してますよ。下僕とドレスをゲットしました」
「そっちもか。みんなアネモネさんのキャラでオナニーしたいんだろうな」
「担当GMは女性ですけどね。ご結婚なさっているそうですよ」
 心底馬鹿にした声で森山をせせら笑うと、彼はしばし押し黙り、その後いきなり話題を変えた。
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Copyright © 『アンチ・シンデレラ』 白木紅愛・作. all rights reserved.
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