何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

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021| 招かれざる客、比佐田キリア
「お久しぶりですー。アネモネさんもFシナリオ参加組ですか。僕もFシナリオに参加してます。F-1とF-2をうろうろしてるんで、お会いしたらよろしくですー」
 フレンドリーだが誠意のない挨拶をする奴だと思った。
 自分のキャラの活躍をさりげなく自慢しているのがウザい。
 自慢、それはつまり、F-1に参加しているという件。
 Fシナリオグループの中では、F-1のみが本筋だった。
 F-1シナリオに参加出来るのは選ばれた数名だけで、参加の面子は毎回変わる。それは今作で導入された、新しいシステムだった。シナリオメイキングシステムは廃止、シナリオグループ内の構成が大きく変わったのだった。Fシナリオを例に挙げると、F-2、F-3、F-4をそれぞれ別のGMが担当、各シナリオはリンクしておらず、シナリオ内での出来事の影響は余所には及ばない。各シナリオの参加者の中で特に活躍した者が後日F-1のセッションに参加、F-1シナリオの参加者だけが世界の命運を左右するメインストーリーに関与出来る。ただし閉鎖シナリオの参加者がF-1に選ばれることはない。そしてリアーヌの参加しているF-4は閉鎖扱いだった。
 何が「お会いしたらよろしくですー」だ。
 隔離シナリオ参加者の私にプギャーしに来たのか。
 って、それは流石に私の被害妄想だろうけどね。

 この乾いたコメントを私のブログに書き込んだのは、セミプロとして活動している同人作家の比佐田キリア。十代の頃からプロレベルの画力を有していた彼は、この界隈では有名人、そして人気者でもあった。ただしプレイヤーとしてではなく、絵の巧い人として。
 彼の絵柄は中性的で、流行に乗じた華やかさと清潔感を有していた。彼は他人の持ちキャラを積極的にイラストに起こし、或いは漫画にすることで、周囲の支持を集めていた。
 比佐田のことは好きではなかった。彼の媚びた絵が嫌いだった。彼はアウレーリアのイラストを何度か描いてくれたのだが、決して私の創ったキャラを魅力的に描こうとはしなかった。アウレーリアの設定書には「憂いを帯びた端整な顔立ちの、儚げな少女」とある。しかし比佐田の手に掛かると、憂いや儚さの欠片もない、まるでモブキャラのような地味な顔にされてしまうのだ。そのような顔のキャラが描けないなら仕方ないが、描けるのに描こうとしない。私はそこに拒絶を感じた。口先では、小手先では、周囲の人々に媚びながら、彼が魅力的に描くのは自分のキャラとその恋人だけ。創作物は正直だ。思い入れの差が如実に出る。フレンドリーな人物を装ってはいるものの、彼は居場所を得るために他人の創った好きでもないキャラをダシにしているのだ。私はそう解釈した。そして彼を嫌悪した。しかしこの不快感は、同族嫌悪なのだろう、と私は密かに思っている。
 何故なら私は比佐田キリアのファンを演じているからだ。
 これほどまでに嫌っているのに「比佐田さんのファンです。応援しています」などと平気で発言しているからだ。
 そして私はこれからも同じように演じるだろう。比佐田のファンのフリをして、彼を取り巻く連中の中に紛れ込むだろう。自分を殺すためだけに。たかがゲーム、たかが二次元、たかが非実在少女のことで毎日涙を流していること、ゲームをまったく楽しめないのにやめることが出来ないこと、そんな自分を隠すために自分自身の表層を嘘で塗り固めるだろう。
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Copyright © 『アンチ・シンデレラ』 白木紅愛・作. all rights reserved.
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