何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

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019| 初回のセッションを終えて
 落胆に次ぐ落胆だった。
 新キャンペーンシナリオ『外なる神々の囁き』のGMの大半が新人であることが、第一回セッションの直前に発表された。オンラインセッション用のスタッフの入れ替えがあり、旧作のGM陣はシナリオ統括などの裏方に回るとのことだった。つまり星野さんも乃木菜月も私のキャラクターの物語を執筆することはない、ということだ。
 参加シナリオの決定は、運営チームがおこなった。
 私のメインキャラのリアーヌ、『外なる神々の囁き』というタイトルを見てより深く、より的確にシナリオに関与するために、つまりリプレイ小説で活躍するために創ったキャラは、まるで初心者が作ったような僻地のシナリオに割り振られた。シナリオF-4、年端もいかない少年が遠足気分で仲間を集い、魔剣を探しに出かけるという内容。リアーヌと同じシナリオに参加を希望していた森山がFグループ以外のシナリオに飛ばされたのが救いだった。
 F-4シナリオの他の参加者は、件のNPCの少年に善意で協力するような裏表のないキャラばかりだった。リアーヌには合わない空気。神官戦士リアーヌは、無邪気な子供やそのお仲間と慣れ合うようなキャラじゃない。空気を読めないキャラとして、リプレイ小説でハブられるだろう。そんなことを思ったが、だからといって自分の創ったキャラクターの設定を曲げるような真似はしなかった。「魔剣を手に入れるため、あえて仲間のフリをする」「魔剣を発見するまでは、周囲の信用を得るために、つまり油断させるために、一行を補佐する」「いつでも背後を取れるよう、常にしんがりを務める」、そんなロールプレイをおこない、ひねくれ者を演じながらもプレイヤーの目線ではシナリオ進行に協力した。
 その甲斐あってか、リアーヌは小説内で優遇された。
 他のキャラに比べて出番が多く、内面描写も丁寧だった。
 だけどリアーヌという人間の複雑さはそこになかった。
 星野さんの筆力でなければリアーヌは描けない。いや違う、私は星野さんに合わせてリアーヌを創ったのだ。星野さんの文体、作風、感性、思想、それらがもっとも引き立つようリアーヌというキャラを創った。だから星野さんではない人がリアーヌというキャラを書いても、何か違う、これじゃない、そんな不満が生じるのはむしろ当たり前だった。

 それでもリアーヌは恵まれていた。
 他のふたりのキャラクター、踊り子のアヌーシュカと女貴族のユーリアは小説内で持て余されていたし、アリスに至ってはセッションの時点でGMがドン引きしていて、小説内での扱いは「こんなキャラなんて書きたくない。俺の執筆する世界にこんな奴を存在させたくない」といった悲鳴が聞こえてくるかのような、腰の引けたものだった。
 あと九回も残っている。あと九回、そして四キャラクター分、計三十六回のセッションに私は参加しなければならない。
 娯楽だったはずのものが、いつしか義務になっていた。
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Copyright © 『アンチ・シンデレラ』 白木紅愛・作. all rights reserved.
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