何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

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012| 買い物依存症の実態
 店先のショーケースの中に人形が並んでいた。人形は一体ごとに紙の箱に入っていて、いかにも商品、といった感じで購入客を待っている。ファッションドールと呼ばれる類いの、大人に人気の着せかえ人形。気づくと足を止めていた。埋もれるように箱詰めにされた一体の人形に、視線が吸い寄せられていた。
「ブライス。お好きですか?」と店長らしき男が不意に私に声をかけてきた。
「いえ。名前しか知りません。可愛いですね」
「可愛いでしょ」と男は嬉しそうに笑った。
「これは『ユニバーシティオブラブ』です。余所ではプレミア価格になっているけど、うちはメーカー希望小売り価格のままなので。奥にも色々あるので見ていってください」
 笑顔でそう言いながら、店長は店の奥に消えた。
 商売が上手そうじゃないな、そんなことを思いながら店内を見回すと、ファッションドールだけでなくガンダムのプラモデルやアニメキャラのフィギュアなどが並んでいるのが見えた。ああ、商売をしたいんじゃなくて、好きなものを売っているんだ。何故か胸が痛かった。先ほど店長が『ユニバーシティオブラブ』と呼んだ人形を私はずっと眺めていた。
 アウレーリアみたいだ、と思ったのだ。
 ウェーブのかかった長い金髪、切り揃えた前髪、翡翠色の淡い瞳。ただ可愛いだけでなくどこか不気味な表情も、アウレーリアっぽいと思った。暗い原色の服装も、どこか彼女を彷彿とさせる。
「これ、いたたげますか」
 気づくとお金を払っていた。あの日以降、アウレーリアっぽいものを見つけると買わずにいられなくなっていた。今日一日で使った金は十万円を超えている。ファッションドール、高級ランジェリー、アクセサリー。どれも「アウレーリアっぽい」という理由で購入したものだった。ゲームセンターの占いマシンにも五千円以上使っていた。アウレーリアになりきって質問に答えたり、アウレーリアと関連キャラで相性占いをしてみたり。その結果をテキストファイルに起こし、私はブログにアップした。切り離したはずの古いブログに。無断転載ではなく引用の範疇です、と言い訳が出来るよう、楽しげなツッコミを長々と書き添えた。作業に没頭していると、アウレーリアにも未来はある、そんな錯覚に陥った。だけど夢はすぐに醒める。件の小説エントリに新着コメントがついていたけど、私は確認しなかった。
 今の店は客が少ない。こんなことをしていては、お金なんて貯まらない。なのに買い物をやめられない。今の私はアウレーリアっぽいものをただ買い集めるためだけに、体を売って生きている。
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Copyright © 『アンチ・シンデレラ』 白木紅愛・作. all rights reserved.
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