何故私は彼女を殺し、その肉を食らったのか。

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プロローグ
 かつては彼女だったものが尻の穴から滑り落ちる。
 かつては彼女だったものが体の外に排出される。
 かつては彼女だったもの、乃木菜月として知られた個体を構成していた有機物が、今や排泄物となり、便器の奥に落下した。
 乃木菜月。生きることに失敗し、死ぬことにすら失敗した私にもう一度だけ頑張ってみよう、と希望を与えてくれたひと。相入れないものばかりの世界にひとりで生きているのは決して私だけじゃない、と勇気を与えてくれたひと。決して私を愛することなく、生きることすら棄てた私にさらなる孤独を教えたひと。愛しく憎い乃木菜月。憎むがゆえに私もまた、彼女の選択、彼女の行動、彼女の存在そのものを受け入れることが出来なくなった。私にとって彼女は希望、灯火だったはずなのに。
 彼女を殺して肉を食らえば、ひとつになれると思っていた。
 彼女を己に取り込むこと、それが最後の希望だった。
 だけど私の体は勝手に彼女の肉を消化して、かつては彼女だったものを汚物として排泄した。私の意思は彼女のすべてを強く欲しているはずなのに、体は都合のいいものだけを選び取って吸収し、私に無断でそれ以外を不要物と断定する。なんて身勝手なんだろう。私という個の存続は、愛も憎悪も軽視した身勝手によってなされている。ああそうだ、だからこんな結末しか迎えることが出来なかった。私という個を存続させるために私自身すらをも裏切る、エゴイスト極まりないこの肉体の在り方こそが、私自身の精神性、生き方そのものだったのだ。
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Copyright © 『アンチ・シンデレラ』 白木紅愛・作. all rights reserved.
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